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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
「…春馬さん…」
暁が困惑したように言葉を詰まらせたのを見て取り、大紋は包み込むような微笑みを浮かべた。
「…わかったよ。けれどこれだけは忘れないでくれ。
…僕は君の為なら、この命を差し出しても惜しくはない」
穏やかな眼差しの中に、はっとするほどに強い情熱を灯した光が見えた。
「春馬さん…!」
カウンターに置いた手を強く包み込まれる。
…月城とは異なる…温かな手だ…。
「本当だよ。だから君が万が一、窮地に立ったとしたら…僕は必ず君を守る。
例え、この命を捧げても君を守る。それが僕の本望だ」
まるで愛の告白のような熱い言葉を囁かれ、暁の心は切なく痛む。
忘れていた青春の痛みを思い起こしそうで、暁は首を振る。
…もう、自分達の間には生々しい恋の感情はない。
あるのはかつての甘く切ない記憶と思い出だけだ。
けれどこんな風にあたかも求愛かのように囁かれると、暁はつい動揺してしまうのだ。
「…いけません。そんなことを軽々しく仰るものではありません。
絢子さんがお聞きになったら、どう思われるか…」
大紋は自嘲するようにやや苦しげに笑った。
「…そうだな。僕は悪い夫だ。絢子はとても良い妻で…恐らく僕は彼女を愛しているのに…。
君を前にすると、情けないほど呆気なくあの頃の自分に還ってしまうのだ」
暁は男に言い聞かせるように、口を開いた。
「そうですよ。春馬さんは絢子さんをとても愛していらっしゃいます。はたで見ていて微笑ましくなるほどです」
大紋は大変な愛妻家で通っている。
礼也ほど情熱的ではないが、妻をとても大切にしていることがよく伝わる。
暁は幸せそうな絢子を見ると心底ほっとするのだ。
…こんな気持ちになるなんて、あの頃の僕には想像することもできなかっただろうけれど…。
月城が僕をここまで導いてくれたからだ…。
孤独な僕を救ってくれて、愛してくれたから…だから僕はここまで辿り着けたのだ…。
だから僕にできることは、月城を信じることだ…。
漸くひとつの答えが静かに暁の胸に浮かび上がる。
…そう、月城を信じるのだ。彼の愛に酬いることは、信じることなのだから…。
暁はそのひっそりと咲く夜の花のような美しい貌に嫋やかな…けれど毅然とした笑みを浮かべた。
「…だから僕も月城の愛を信じます。
それが僕が彼に捧げられる唯一の愛ですから…」
暁が困惑したように言葉を詰まらせたのを見て取り、大紋は包み込むような微笑みを浮かべた。
「…わかったよ。けれどこれだけは忘れないでくれ。
…僕は君の為なら、この命を差し出しても惜しくはない」
穏やかな眼差しの中に、はっとするほどに強い情熱を灯した光が見えた。
「春馬さん…!」
カウンターに置いた手を強く包み込まれる。
…月城とは異なる…温かな手だ…。
「本当だよ。だから君が万が一、窮地に立ったとしたら…僕は必ず君を守る。
例え、この命を捧げても君を守る。それが僕の本望だ」
まるで愛の告白のような熱い言葉を囁かれ、暁の心は切なく痛む。
忘れていた青春の痛みを思い起こしそうで、暁は首を振る。
…もう、自分達の間には生々しい恋の感情はない。
あるのはかつての甘く切ない記憶と思い出だけだ。
けれどこんな風にあたかも求愛かのように囁かれると、暁はつい動揺してしまうのだ。
「…いけません。そんなことを軽々しく仰るものではありません。
絢子さんがお聞きになったら、どう思われるか…」
大紋は自嘲するようにやや苦しげに笑った。
「…そうだな。僕は悪い夫だ。絢子はとても良い妻で…恐らく僕は彼女を愛しているのに…。
君を前にすると、情けないほど呆気なくあの頃の自分に還ってしまうのだ」
暁は男に言い聞かせるように、口を開いた。
「そうですよ。春馬さんは絢子さんをとても愛していらっしゃいます。はたで見ていて微笑ましくなるほどです」
大紋は大変な愛妻家で通っている。
礼也ほど情熱的ではないが、妻をとても大切にしていることがよく伝わる。
暁は幸せそうな絢子を見ると心底ほっとするのだ。
…こんな気持ちになるなんて、あの頃の僕には想像することもできなかっただろうけれど…。
月城が僕をここまで導いてくれたからだ…。
孤独な僕を救ってくれて、愛してくれたから…だから僕はここまで辿り着けたのだ…。
だから僕にできることは、月城を信じることだ…。
漸くひとつの答えが静かに暁の胸に浮かび上がる。
…そう、月城を信じるのだ。彼の愛に酬いることは、信じることなのだから…。
暁はそのひっそりと咲く夜の花のような美しい貌に嫋やかな…けれど毅然とした笑みを浮かべた。
「…だから僕も月城の愛を信じます。
それが僕が彼に捧げられる唯一の愛ですから…」