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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
その夜、縣男爵家のクリスタルのシャンデリアは眩いばかりに輝き、屋敷中の部屋をきらきらと輝かせていた。

軍部が統制を取り始めた昨今、私人の贅沢な夜会や催し物は控えるように通達がある為、貴族達も夜会を開く機会がめっきり減った。
それでなくとも食品や嗜好品、絹織物や装飾品などの贅沢品が桁違いに高価になったために、多くの貴族達も節約、清貧の生活を強いられるようになったのだ。
富裕な資産家なら兎も角、華族の中には内情は火の車な家も多い。
使用人の給金が払えずに、解雇する華族も少なくない。
社交界での華やかな夜会やお茶会も日に日に減っていった。

礼也はそんな貴族の今のあり方を憂いていた。
「今こそ私たちが華やかな夜会を開き、交流し、経済を活性化させることが大切なのだ。貧すれば鈍すと言うではないか。軍部の横暴さに負けてはならない」
そう宣言し、久々に大掛かりな夜会を開いたのだ。

もっとも礼也は陸軍、海軍の元帥や大臣達などのお偉方を招き、批判が出ないように見事に布石を打っていた。
軍部も炭鉱業で最大の力を持つ縣家を敵に回す気はなかったのだ。

弦楽四重奏の華やかな音楽に、招待客はしみじみと耳を傾ける。
「…このような華やかな夜会は久々だ。さすがは縣男爵家だな。かつての良き時代を思い出すよ」
「本当に…。華やかなりし社交界を思い出しますわ。
まあ、ご覧になって!縣男爵ご夫妻ですわ。
…ご立派なお姿は欧州の俳優のよう…。奥様の光様のお美しく煌びやかなこと!
…まるで美しい絵のようなお二人ですわね」

多くの招待客の羨望の溜息と称賛の眼差しの中、堂々たる黒燕尾服姿の礼也が、光を優しくエスコートしながら、大階段を優雅に下り始める。
光は真紅のシルクタフタのイブニングドレスにダイヤモンドの首飾り、頭には美しい黒髪に映えるエメラルドのティアラだ。

…二人の姿はとても軍靴の足音が喧しい厳しい昨今の日本とは思えぬほど、華やかで優雅で…夢のような美しい世界を体現していた。
招待客は…軍部の重鎮も含めて、美と優雅の尊さと価値を改めて密かに感じ入っていた。
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