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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
夜会は華やかに和やかに進んだ。
社交界デビューなどという優雅な儀式すらも自粛せざるを得なくなった今、若い令嬢達にとっては美しいドレスを身に纏い、髪を華やかに結い上げ、高価な宝石を着けることが出来る貴重な夜会であった。
煌びやかに装った令嬢達を同じく正装した若い貴族の子息達が次々とワルツを申し込む。
令嬢達は頬を薔薇色に染めながら、青年達の手を取るのだ…。
瑞々しく微笑ましい光景がそこここに見られた。

「夜会は大成功ね。こんなに華やかで楽しい夜会は久しぶりだと皆様からお褒めのお言葉をいただいたわ」
光が大きな美しい瞳をきらきらと輝かせ、礼也を見上げる。
礼也はそんな光を愛おしくて堪らないように見つめて微笑んだ。
「君の華麗な美しさは今宵の夜会の何よりの花だ。
…宝石もドレスも素晴らしいが中でも一番美しいのは君自身だ。愛しているよ、光さん…」
「…礼也さん…」

その白絹のように美しい手にキスをする礼也を微笑ましげに見遣って、大紋は暁の姿を探した。
絢子は暁人と薫と菫を連れて中庭へと出かけていた。
子ども好きの絢子は縣家の子どもたちに大人気なのだ。

…と、不意に廊下が騒がしい声に包まれた。
「お待ち下さい!まずはお取り次ぎを…!」
「うるさい、そこを退け」
珍しく慌てふためく執事の生田の声に応えるのは、若い男の冷たい声だ。
無作法なまでに荒々しい幾人かの靴音が響き、大広間の扉が乱暴に押し開かれた。

招待客達の視線が一斉に注がれる。
大紋は眼を見張った。
…黒い制帽、ウエストが絞られた黒い憲兵隊の軍服、胸には夥しい数の勲章が付けられている。
磨き上げられた長い軍靴ブーツが大理石の床を踏み躙るように進む。
驚くほど端正に整った男の貌には黒いアイパッチが付けられ、彼が隻眼であることが見て取れた。
それはさながら彼の禍々しく冷酷な内面を表すに相応しいアクセサリーのようでもあった。
男は身辺を警護する部下を従え、広間の中央にゆっくりと進んだ。
華やかなヨハン・シュトラウスの音色は途絶え、緊張感漂う静寂がその場を支配した。

憲兵隊の将校と思しき、若い男はその薄い唇に酷薄な笑みを浮かべ、辺りを睥睨するように見渡すと表情を変えずに声を放った。

「…縣暁はどこだ?話がある」
傍若無人な将校が、暁の名前を口にしたことに、その場が騒めいた。
大紋は息を飲んだ。
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