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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第13章 永遠の最果て
暁の大きな瞳が更に見開かれ、食い入るように目の前の男を見つめる。
「…証拠は…?月城は偏った思想家ではありません。私が保証します」
「配偶者の言うことなどあてにはならんな。アリバイも配偶者の証言は有効ではないことを知らんのか?」
暁は優雅にステップを踏みつつ、鬼塚を見据える視線は離さない。
鬼塚はふっと揶揄うように笑った。
「…美人は怒っても美人なんだな」
「ふざけないで下さい。証拠もないのに要注意人物と決めつけるのですか?それが貴方達憲兵隊のやり方なのですか?」
鬼塚が不意に立ち止まる。
暁が眉を顰めるほどに握る手に力を込め、腰を引き寄せた。
隻眼の瞳の奥には冷たい加虐的な光が宿っていたのが見て取れる。
「…証拠なんぞいくらでも作れるんだよ、綺麗な坊や。
…俺が奴は怪しいと睨んだ。…それが証拠だ」
そうして、まるで愛の言葉を囁くかのように語りかける。
「…月城に言っておけ。あんたと離れたくないなら、直ぐに友人と手を切れとな…。そうでないと奴の今後の無事に一切の保証はない」
唇が触れそうな距離まで迫られ、暁は怒りを込めて鬼塚を突き放した。

ヨハン・シュトラウスの華麗なワルツがふっと途切れた。
広間はしんと静まり返っている。
来賓の視線が二人に集まる。
「お帰り下さい。鬼塚少佐。もうワルツは終わりました」
凛とした声が広間に響いた。
鬼塚はさも可笑しそうに笑い、優雅に胸に手を当てお辞儀した。
「楽しかったよ、坊や。初めて正式なワルツを踊った」

鬼塚が踵を返し、部下を引き連れ退出しようとするその背中に、涼やかな声が響いた。
「…鬼塚少佐。蛇足ですが申し上げておきます。
坊や扱いはやめていただきたい。…私は恐らく貴方より十歳は年上なのですから…」
鬼塚は思わず振り返り
「え⁈なんだって⁈」
隻眼の瞳が見開かれ、思わず素朴な表情になる。
暁はにっこりと微笑むと、優美にお辞儀を返した。
「調査が甘すぎますね。僕は三十六歳ですよ。坊やは貴方だ。鬼塚少佐」

部下が気色ばんで暁に食ってかかろうとするのを、鬼塚は片手で止める。
「…これは一本取られたな。また会う時には年上として敬意を払おう」
「もう二度とお目にかからなくて済むことを願います」
ぴしゃりと言い捨てた暁を、可笑しくて堪らないように声高に笑いながら、鬼塚は部下を引き連れて広間を去っていった。
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