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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第14章 Coda 〜last waltz〜
「アキラ!アキラ!ツキシロの船がもうすぐ戻ってくるよ!僕の部屋から見えたもん!」
隣のペンションの息子のミシェルが出窓からキッチンを覗き込むように、甲高い声を上げた。
暁は微笑みながらミシェルを見下ろす。
天使のようにふわふわの金髪の巻き毛が可愛らしい。
真っ白な肌に小麦色のそばかすが浮いているのが、いかにもやんちゃな男の子然としている。
…暁はふと薫の幼い頃を思い出した。
「ありがとう、ミシェル。今、行くよ」
…そして、ウィンクして囁く。
「宿題が終わったらあとでおいで。バニラアイスクリームが出来ているからね」
ミシェルは青色の瞳を輝かせ歓声を上げた。
「やった!アキラのアイスクリーム、大好き!」
言うが早いか、脱兎のごとく駆け出し隣家のペンションの玄関に姿を消した。
思わず笑ってしまいながら、開け放った窓から水平線を見遣る。
暁は作りかけのブラウンマッシュルームとアーティチョークのキッシュ仕込みを終わらせると、急いで手を洗い、エプロンを外して店の外に出た。
…南仏の八月の陽光は濃く鮮やかだ。
その眩しさに、思わず眼を細める。
この地に来て二度目の夏だ。
もうすっかり慣れた筈なのに、まだ見るたびに圧倒されるのだ。
目の前に広がる紺碧の海は今日も穏やかに凪いでいる。
…コートダジュールの海…。
日本の海とは違う空の碧さをそのまま映し取ったような透明度の高いからりとした陽性な海だ。
店の入り口で白い手を額に翳しながら、暫し海を眺める。
…月城の船が、遠くの波間に小さく見えた。
暁の優美な美貌にほっとしたような笑みが浮かんだ。
…と、背後から落ち着いた男性の声が静かに聞こえた。
「ツキシロかい?今日は早い帰りだな」
振り返るその先には、ブルーのストライプの洒落たシャツを着、スケッチブックを抱えた背の高い男性が佇んでいた。
「フロレアン!おはようございます」
暁は親しみを持って微笑みかける。
…フロレアン・デュシャン。
光のかつての恋人で、フランスでは知らぬひとはいないほどに著名な画家…。
そして、暁と月城のニース定住に当たり、数々の尽力を尽くしてくれた恩人だ。
隣のペンションの息子のミシェルが出窓からキッチンを覗き込むように、甲高い声を上げた。
暁は微笑みながらミシェルを見下ろす。
天使のようにふわふわの金髪の巻き毛が可愛らしい。
真っ白な肌に小麦色のそばかすが浮いているのが、いかにもやんちゃな男の子然としている。
…暁はふと薫の幼い頃を思い出した。
「ありがとう、ミシェル。今、行くよ」
…そして、ウィンクして囁く。
「宿題が終わったらあとでおいで。バニラアイスクリームが出来ているからね」
ミシェルは青色の瞳を輝かせ歓声を上げた。
「やった!アキラのアイスクリーム、大好き!」
言うが早いか、脱兎のごとく駆け出し隣家のペンションの玄関に姿を消した。
思わず笑ってしまいながら、開け放った窓から水平線を見遣る。
暁は作りかけのブラウンマッシュルームとアーティチョークのキッシュ仕込みを終わらせると、急いで手を洗い、エプロンを外して店の外に出た。
…南仏の八月の陽光は濃く鮮やかだ。
その眩しさに、思わず眼を細める。
この地に来て二度目の夏だ。
もうすっかり慣れた筈なのに、まだ見るたびに圧倒されるのだ。
目の前に広がる紺碧の海は今日も穏やかに凪いでいる。
…コートダジュールの海…。
日本の海とは違う空の碧さをそのまま映し取ったような透明度の高いからりとした陽性な海だ。
店の入り口で白い手を額に翳しながら、暫し海を眺める。
…月城の船が、遠くの波間に小さく見えた。
暁の優美な美貌にほっとしたような笑みが浮かんだ。
…と、背後から落ち着いた男性の声が静かに聞こえた。
「ツキシロかい?今日は早い帰りだな」
振り返るその先には、ブルーのストライプの洒落たシャツを着、スケッチブックを抱えた背の高い男性が佇んでいた。
「フロレアン!おはようございます」
暁は親しみを持って微笑みかける。
…フロレアン・デュシャン。
光のかつての恋人で、フランスでは知らぬひとはいないほどに著名な画家…。
そして、暁と月城のニース定住に当たり、数々の尽力を尽くしてくれた恩人だ。