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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第14章 Coda 〜last waltz〜
月城の月の光に照り映える彫像のように美しい貌を見つめながら、静かに首を振る。
「…兄さん達がとても気になるけれど…帰りたくはないよ。ここが僕の終の住処だと思っている」
きっぱりとした迷いのない言葉だった。
月城の眼鏡の奥の澄み切った瞳がそんな暁を包み込む。
「私もです。梨央様や綾香様のことがとても気掛かりですが、帰りたくはありません。…冷たいようですが、私はここで新しい人生を始めたと思っております…」
暁は月城を抱きしめた。
…潮の香り…そして、変わらぬ水仙の花の香り…。
「冷たいなんて思わない。梨央さんだって、そうだ。君が新しい人生をスタートさせたことを喜んで下さっているよ…」
「…暁様…」
どちらからともなく、唇を重ねる。
…お互いの愛おしさが蜜のように溢れでる甘いくちづけだ。
波打ち際の波が二人の足元に優しく打ち寄せる。
蒼く光る夜光虫が二人の脚に夢のように纏わりつき、ゆっくりと離れてゆく。
暁はその海水をそっと白い手のひらに掬った。
儚げな煌めきは、手のひらに乗せると魔法のように消えてゆく…。
月城と並び、黙って夜の海原を見つめる。
夜天の星と夢の入り口のような三日月…そして、いつ消えるかわからぬほどに儚い…しかし美しい蒼い光を放つ夜光虫…。
全てが融合し、ひとつになる。
…これが僕の夏の華だ。
かつて、亡き母と見た大川の花火…。
月城が連れて行ってくれた大川の花火…。
どれも暁の大切な大切な宝物だ。
…けれど…。
暁は隣に佇む男を見上げる。
…自分の命より愛おしい…美しいひと…。
月城と一緒に見る蒼く光る夜光虫…。
満天の星々と、優しい煌めきの三日月…。
…これが僕の夏の華なのだ…。
暁は再び強く月城の手を握りしめ、飽くことなく夏の華を見つめる。
…傍らの最愛の男の体温を感じ続けながら…。
〜la fin〜
「…兄さん達がとても気になるけれど…帰りたくはないよ。ここが僕の終の住処だと思っている」
きっぱりとした迷いのない言葉だった。
月城の眼鏡の奥の澄み切った瞳がそんな暁を包み込む。
「私もです。梨央様や綾香様のことがとても気掛かりですが、帰りたくはありません。…冷たいようですが、私はここで新しい人生を始めたと思っております…」
暁は月城を抱きしめた。
…潮の香り…そして、変わらぬ水仙の花の香り…。
「冷たいなんて思わない。梨央さんだって、そうだ。君が新しい人生をスタートさせたことを喜んで下さっているよ…」
「…暁様…」
どちらからともなく、唇を重ねる。
…お互いの愛おしさが蜜のように溢れでる甘いくちづけだ。
波打ち際の波が二人の足元に優しく打ち寄せる。
蒼く光る夜光虫が二人の脚に夢のように纏わりつき、ゆっくりと離れてゆく。
暁はその海水をそっと白い手のひらに掬った。
儚げな煌めきは、手のひらに乗せると魔法のように消えてゆく…。
月城と並び、黙って夜の海原を見つめる。
夜天の星と夢の入り口のような三日月…そして、いつ消えるかわからぬほどに儚い…しかし美しい蒼い光を放つ夜光虫…。
全てが融合し、ひとつになる。
…これが僕の夏の華だ。
かつて、亡き母と見た大川の花火…。
月城が連れて行ってくれた大川の花火…。
どれも暁の大切な大切な宝物だ。
…けれど…。
暁は隣に佇む男を見上げる。
…自分の命より愛おしい…美しいひと…。
月城と一緒に見る蒼く光る夜光虫…。
満天の星々と、優しい煌めきの三日月…。
…これが僕の夏の華なのだ…。
暁は再び強く月城の手を握りしめ、飽くことなく夏の華を見つめる。
…傍らの最愛の男の体温を感じ続けながら…。
〜la fin〜