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隠密の華
第8章 七
「そんなことを聞いてるんじゃない。これから何処へ向かうかと聞いてるんだ」
「じゃあ口付けてくれ!」
「……何?」
「都が俺に口付けてくれたら、諦める!」
「と言われても……」
……本当に、何を言い出すんだろうか。どうする……。自分から口付けたことなんて一度もない。しかし、しないとしつこそうだ。
「分かった。歯を食いしばれ」
「いや、待て。何で歯を食いしばる必要が……」
「桐、行くぞ!」
すーはー、すーはー、と深く深呼吸をすると、私は気合いを込めて桐へ話し掛ける。そして胸の前で両拳を強く握り締め、喉奥から声を振り絞る。
「はぁぁぁぁ……!」
「何が始まろうとしてるんだ……」
「桐、行くぞ!」
そのまま呆然としている桐へまた言い放つと、私はガシッと桐の首へ両手を回し、桐の顔を自分の方へ引寄せた。そのまま口付けようとして、まさか桐の唇をガブッと噛むとは思わなかった。