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隠密の華
第9章 八
「桐、ありがとう。お前と会えて、本当に良かった」
「最後みたいなこと言うなよ!」
「兄弟のいない私には頼りになる兄の様で……短い間だったが、一緒にいて楽しかった」
人間的にも未熟な私と一緒にいてくれて、それだけで救われた。こうして微笑み掛けれるのも、桐へ心を許した証拠。
「馬鹿都!隠密なんてやめろよ!」
優しく桐へ微笑みながら、桐から話し掛けられるが。私は再び真剣に設樂様へ尋ねる。
「……設樂様、それで一つ疑問があるのですが。あちらの将軍は、胡蝶と白夜の結婚を許してくれるのですか?」
向こうの将軍は、白夜と胡蝶の仲を反対していたと聞いた……。そういえば白夜は、胡蝶を連れ戻したのは設樂様だと言っていたし、一体何が真実なのかは分からない。
「今双国共に兵力も武器も尽きそうな状況で戦争を止めたいが、平和協約を結ぶ為の理由を探している。そこで胡蝶と白夜の結婚は平和協約を結ぶだけではなく、国民の希望になるだろう。向こうの将軍も、必ず結婚を許す」
「それを聞いて安心しました。……後一つだけ。白夜には、私が胡蝶だと嘘をつき続けないといけないのでしょうか?」
嘘は、きっといつかは悟られるだろう。それがもし再び戦争の火種になれば……そうならないとは言い切れない。胡蝶と偽り結婚する事も危険な選択。