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隠密の華
第9章 八
そして――夫になる白夜を騙しながら日々を過ごす事が隠密であろうと、きっと出来ない。
「では、都として白夜を惚れさせる事が出来るか?」
「それは……」
真剣に設樂様の顔を見ていたが、聞き返されると目をそらす。……私には、白夜を惚れさせる事など出来ないだろう。設樂様も同じ考えな筈だ。私が胡蝶として振る舞っているからこそ、白夜は私を溺愛していた。私が胡蝶でないと分かれば、待っているのは酷い拷問か極刑……。
「お前は胡蝶で居続けるんだ。これは都、お前の身の安全の為でもある。分かってくれるな?」
「……はい」
「では明日、水虎国へ向かう。二人共、ゆっくり休め」
心を無にしながら、設樂様の言葉に膝ま付いたまま頭を下げた。隣では桐が不服そうにしていたが、何か言葉を掛ける事は無かった。