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隠密の華
第9章 八
* * *
私が隠密になったのは、年が13の頃。自分から城へ行き、設樂様に城へ働かせて欲しいと志願した。……まさかこうして国の為に結婚する事になろうとは……人生、何が起こるか分からない。
「おい、都。起きろ」
あれから山賊の住処の寝台で眠っていると、急に誰かの声が聞こえて目を覚ました。そして側に立っている桐に気付いて、眠気眼のまま体を起こしながら尋ねる。
「桐?どうした……」
「二人で逃げるぞ」
「……逃げる?……は?」
まだ朝じゃない。こんな夜中に冗談を言いにくるなんて。
「つまらない冗談を言ってる暇があるなら、寝ろ」
「冗談じゃねぇ」
冷たく言い捨て再び寝台に横へなろうとしたが、急に桐から手を捕まれると動きを止め、桐の顔へ視線を向けた。