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隠密の華
第10章 九
……良かった。これで平和な世になる……。心地の良いそよ風に吹かれながら、私は自然と頬が緩んだ。
「おい、お前浮かれてんじゃねーよ」
しかし、隣に立つ桐から睨まれると、我に返る。
「浮かれてなどいないが……」
「ニヤニヤしてただろ!白夜に抱きつかれて、そんなに嬉しいのか!」
「……は?別に嬉しいのは、白夜に抱きつかれたからではないんだが……」
……こいつは何故怒っているんだ。意味不明。機嫌の悪い桐を、私は目を瞬きさせて見つめた。
「もう良い!お前なんか白夜と夫婦になって、すぐに抱かれろ!」
「桐、怒ってるのか?」
「何で俺が怒るんだよ!怒ってるわけねーだろ!」
「そうか?なら良いけど……」
まずは白夜に桐の許しを得ないといけない。桐を私の護衛にして、逃げた事の罪を免除してくれる様に。夫婦になる為の事も、夫婦になってからの事も、全部その後だ。