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隠密の華
第10章 九
「これから夫婦になるんだ。出来ないわけがないな?」
「それは……」
鼓動を速めながらちらっと設樂様へ視線を向けると、設樂様と目が合う。まるで何事にも動じないかの様な、冷静な瞳。……これは、口付けろということか?
「胡蝶、出来ないのか?」
「う……」
それはそうだ。夫婦になれと言うぐらいだから、誓いの口付けもしろと……思われて当然だ。かくなる上は……。
「分かりました。白夜、目を閉じて……」
目を伏せながら白夜へ頼むと、私は白夜の首へ両手を回す。そして――微笑む白夜の体を自分の方へ引き寄せ、意を決した様に白夜の顔へ顔を近付けた。
「行きます……」
「待て」
設樂様から呼び止められるとは、思わなかったが。