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隠密の華
第3章 二

『分かりました……』

『暫くは城の地下廊に身を隠す。跡を継ぐのは、兄上だ。戦の後一月帰って来なければ、俺は死に、跡継ぎを兄上にするよう遺言状を書いておく』

『本当にそれでよろしいんですか?』

『勿論だ。俺は縛られたくない。自由が良いのだ。それに妾の子だからと言って、跡を継ぐのが兄上でないのは気に入らないんだ』

『設樂様は山伏(ヤマブキ)様を尊敬しておられますからね』

隠密としてでもあるが、設樂様の頼みをきいたのは人間として設樂様を尊敬するからだ。いつも自分以外の他人を優先し、思いやる。そんな設樂様との約束だからこそ、何があっても守りたかった。……まさかこの日から一月後、城の地下廊に身を隠していた設樂様が姿を消すとは思ってもいなかったが。

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