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隠密の華
第11章 十
朝陽の射し込む薄暗い小屋は誇り臭く、一人でいると薄気味悪い。……こんなところにいる場合ではないのに。
式典が始まる正午までには、城へ戻らないといけない。それまでに桐を説得して、ここを出なければ……。
「ふざけてない。俺はこのままお前を連れて逃げる」
「……馬鹿な事を!白夜から簡単に逃げられるわけないだろ!」
「馬鹿馬鹿言うな。……なあ、胡蝶。お前は本当はどうしたいんだ?」
「どうしたいって、そんなこと……」
「俺と白夜、どっちと一緒にいたい?」
鼓動を速めながら、扉越しに桐の話を聞いていたが。
いきなり真剣に尋ねられると、一瞬戸惑ってしまう。
……桐と白夜?どっちと一緒にいたいかなんて悩まなくても、私は白夜の妻。白夜といなければいけない。
答えはすぐに出る。