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隠密の華
第11章 十
それなのに――何故、こうも心が揺れ動くのだろう。
「胡蝶、お前は誰を想っているんだ」
暫く私が無言でいると、桐が扉を開け、真剣な顔で尋ねた。
……私は誰も想ってはいない。そう告げるだけで良いのだが。
「桐……」
ポツリと呟いた瞬間、桐の唇が私の唇を塞ぐ。
「んっ……!」
早急に深く、そのまま離すまいと触れ合わされた唇。それにより息苦しくなりながら、私は桐に押されて小屋の奥へ後ずさる。
そして壁へ背中をぶつけると、獣の様に本能を剥き出しにした口付けから翻弄された。
「んっ……くっ……」
何度も何度も私の上下唇を貪り、心の通っていない様な瞳で混乱する私の顔をじっと見つめる。
……普段の桐ではない様だ。荒々しく野性的で、私よりも落ち着き払った態度は余裕さも感じる。