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隠密の華
第3章 二
設樂様を溺愛していた将軍は、私へ密命を出した途端にあまりの悲しみで床に伏せてしまった。
このままでは戦にも負け、国が滅ぶかもしれない。
それだけは阻止せねば。
……絶対に私は再び設樂様と会う。どんな手段を使っても――
* * *
「桐」
「何だよ?」
「お前、好きな女はいるのか?」
「……はっ……!?」
あれから私は、外で大桶に沸かされた湯へ浸かり、砂埃で汚れた髪や全身の肌を綺麗に洗い流した。山賊の言葉に従うのは癪だが、これも仕方ない。ここから逃げる為だと、心で自分に言い聞かせる。
「いきなり何だ?それよりお前、体洗ったか?」
桐は頭の男から私の見張りを言い付けられ、大桶に背を向け座っている。どうやら私の裸には興味が無い様だ。一度も私の方を見ない桐を、私は湯船に浸かったままじっと見る。
「ああ、洗った」
「じゃあ出ろ。頭のとこ行くぞ」
「なあ桐、私を抱かないか?」
そして質問すると、一瞬ビクッと桐の体が揺れた事に気付いた。