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隠密の華
第3章 二
静まり返った住処で頭が話すと、私は頭を強く殴られた様な錯覚に陥った。……何故この男、私が隠密だということを知っている?
「……何を言ってるんだ。違う。私は隣の村の……」
「実はな、お前が隠密だとは早くから知っていた。何故か分かるか?」
……何があっても、隠密だと認めてはいけない。怪しまれないように狼狽えてもいけない。それなのに……この全て見透かすような瞳で見つめられると、心が揺れる。何故だ?何故かこの瞳、懐かしい……。
「それはな、俺が……」
「っ……!」
鼓動を速めながら男の話に耳を傾けていると、唐突に男が顔を覆っていた黒い布を剥ぐ。その瞬間、私は声にならない声で名前を呼んだ。
「設樂様……どうしてあなたが……」