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隠密の華
第3章 二
同時に声も手足の指先も、体も怖いものを見た時のように震える。それに加え、わけの分からない涙までじわりと込み上げた。
「久しぶりだな、……都」
「戦地へ向かったのでは……何故設樂様が山賊の頭になっているのですか……?」
「それには深いわけがあるのだが」
……良かった。生きてらして。元気そうで。もう会えないかと思っていた。山賊の頭になっていたのには驚いたが、こうして会えただけで私は十分――
「ずっと、会いたかったんです。心配しました……」
「すまない」
目に涙を溜めたまま設樂様へ話し掛けると、体を引き寄せられ両腕で包み込まれる。そして設樂様の胸に顔を付けながら頭を撫でられ、優しく囁かれた。
「俺も会いたかった」