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隠密の華
第3章 二
……胸がきゅうっとなる。いつもの設樂様の優しい声だ。落ち着いていて、あたたかい……。さっきまであんなに冷徹だった姿が信じられない。
「顔を上げて。もっとよく顔を見せてくれないか?」
「はい……」
「愛らしい顔だ。口付けても?」
「えっ……」
穏やかに設樂様から頼まれ顔を上げると、にこりとした笑顔で尋ねられ、一瞬戸惑う。同時に目鼻立ちがはっきりとし、綺麗に整った顔立ち。頭上で一纏めにされた、艶やかな黒髪。久しぶりに見ても相変わらず美しい容姿で、つい見惚れてしまった。……が、何故急に。こんなことを言う方だったろうか。駄目とも言えない。
「……都――」
設樂様の笑顔を凝視しながら返事を考えている内、顔が近付いてくると私は目を丸くした。