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隠密の華
第3章 二
「先程までの態度を許してくれ。周りに気付かれない様にする為には、味方から欺かなければならなかったのだ」
「……分かっております」
「見ての通り、俺は今山賊の頭だ。俺以外の山賊達は全員俺の正体を知らない」
「……何の為ですか?山賊のふりをしているのは」
設樂様からの密命。きっと大事なのだろう。山賊のふりをしているのも、何か理由がある筈だ。
「水虎国の白夜(ビャクヤ)を知っているな?」
「水虎国将軍の息子ですが……」
「今我が火凰国と水虎国は領地争いに明け暮れ、関係のない民や兵士の命を奪っている。俺は一刻も早くこの争いを終わらせ、双国共に共存した世を作りたい。その為に都には、白夜の好む女を調べて貰いたいのだ」
「好む女をですか……?」
私には聡明な設樂様の思考は想像もつかないが。理由が何にせよ、目指すものは同じ。
「ああ。そして白夜が自分の命を捧げる程の女を見つけ出して欲しい。それも、火凰国の女しか駄目だ」
「それは、何故……」
「白夜とその女を夫婦にさせ、双国の和解への種とするのだ」
平和なこの世にしたい。……設樂様の瞳からは、そんな思いが強く伝わってきた。