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隠密の華
第4章 三
紫水も私が出来ない事を知っていて、私達を手放さない為に言っているのだろうが……私も隠密として失格だ。密命を果たす為には自尊心も捨てなければいけない。それなのにどうしても、体が拒んでしまう。
「どうやらお前を気に入ってしまった様だ……桐と一緒に、国に帰したくはない」
「うっ……」
「都、不治の病とは言え、私も軍の隊長だった。簡単に逃がしはしない。抵抗されても押さえつけるだけの力はある」
「紫水様、では……」
頭の中で葛藤しながら、私は冷淡な紫水へ話し掛ける。そして……。
「……命令に従えば良いのですね?」
意を決した様に尋ねながら、両手を紫水の方へ伸ばした。……私は、隠密だ。密命の為には何でもする。国の為に――
「っ……」
そのまま紫水の着ている着物を捲ろうとしたが。……突然部屋の入口から名前を呼ばれ、手を止めた。
「都、来い!」
「桐……?」
「逃げるが勝ちって知らねーのかよ!」
「……逃げる?そんな卑怯な真似、出来るか……」
すぐに視線を向け、入口に立っている桐へ気付くと。苛立った様に叫ぶ桐へ、真剣に答える。