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隠密の華
第5章 四
「分かった分かった!で、何処から逃げるんだ?」
「そんなの階段から……」
やっと桐が立ち上がり、すぐに逃げられると思っていたが……唐突に部屋の扉から声がすると体を強張らせる。
「火凰国の隠密がいると聞いてきたが、まさか胡蝶がいるとは――」
その声は酷く冷血だが、何処か懐かしさもあった。
「久しぶりだな、胡蝶」
振り向いて見ると扉の前には見知らぬ男が立っており、こちらを見て微笑んでいる。……しかも今、胡蝶と言ったか?私を見て?もしかしたら、この男……。
「白夜……?」
男を呆然と見つめる私の口からは、自然と名前が漏れていた。