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隠密の華
第6章 五
桐と私は出会ってから、まだ数日しか経っていない。血も繋がっていなければ、何の関わりもない。ただの山賊と隠密だ。だから……断られても仕方ない。
「……ああ。ここまで来たからには、最後まで付き合ってやるよ」
「本当に良いのか?」
「良いって言ってんだろ」
「ありがとう、桐」
……断られると思っていたが、ぶっきらぼうにも桐が返事をすると、私は笑顔になった。
「その代わり、もう地下牢に入れんなよ」
「うん、分かってる」
犬っころなんて言って、悪かった。こんなに人が良い奴だとは思っていなかった……。
「で、その白夜から胡蝶の居場所をどう聞き出すんだ?」
「それなんだが……一部だけ記憶喪失のふりをするのはどうだろうか」
「記憶喪失のふりを?」
「山賊に捕まった時に頭を打って、自分の故郷や住んでいた場所を覚えていないということにして、聞き出そうかと思っているんだが」
桐に感心しながら笑顔で話すと、そんな私へ桐が一瞬顔をしかめる。