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隠密の華
第7章 六
こんなに隠密をしていて、上の空になったのは初めてだ。それだけ設樂様の件で冷静になれないということか……。
「おい、そんなに設樂様が大事かよ」
「えっ」
「好きなんだろ?設樂様が」
……わけが分からない。
前に座っている桐から真剣に尋ねられると、私は困惑する。
「何を言って……?」
「傷付くってことは、そういうことだろ?隠密としてじゃなく、女として傷付いてんだろ?」
「まさか……!」
「あーはいはい。鈍感だから分かるわけねーよな」
……こいつは、何を言っている。本当にわけが分からない。
「本当に違う!」
「もう良いって……」
「桐!」
必死に誤解をとこうと、仕方なさそうに言う桐へ話し掛ける。
しかし、その瞬間――外から物音が聞こえてくると、私は桐から片手で口を塞がれた。