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溺れる金魚
第15章  彼の怒り
漸く結ばれ、心も繋がったと思ったのは独り善がりだったのか……。


彼にとってはこんな子ども、相手にする価値もないの?

酔った勢い。



それでも良いと昨夜は思った。


それがきっかけとなったなら……。



でも、実際にそれが真実であると突き付けられると苦しさとかわびしさとか虚しさとか、そんなものしかなくて彼女は唇を戦慄かせた。




両の瞼から滴が落ちる。


『紗良……愛してる……』




昨日のあの言葉は、どこまでが真実でどこからが雰囲気に流されただけの偽りの言葉だったのか。


確かめたくても、本人に記憶がないのだから仕方がない。

彼の少し高めの体温も「紗良」と甘く囁く声も、そしてあの突き抜ける快楽も……全てはもう手には入らない。



悲しみで体が震え、紗良は自身で両腕を抱き締めた。



彼の躰をもう一度欲しいと今まで以上に求めて恋い焦がれたが、虚しさが彼女の心に急速に広がるだけだった。
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