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溺れる金魚
第5章  熱いキスを
弱っている彼の髪を優しく撫でた。



起こさないように、細心の注意を払いながら。

やがて立ち上がるとその場から離れた。



すぐに戻ってきて冷やしたタオルを恐る恐る彼のおでこに乗せる。

それでも起きないことを良いことに、紗良は少しだけ大胆になった。



首筋の熱を少しでも吸い取ってやりたい。


彼の脇にゆっくりと腰を落とし、そっと触れた。




彼のすっと伸びた首筋を見るのが好きだった。

そこに触れてみたいと、いつも盗み見ていた。




夫婦なのに……何て小さな欲求。



小さく笑んで指がなぞる。

今なら……。





キスもできそうな距離。


何気無くそう思った途端に鼓動が一つ大きく跳ねたかと思うと急に早まった。




想い人の寝込みを襲ってキスをするなんて、何てはしたない。



でも。


……したい。



彼に……キス、したい……。



その唇に……キス。



大丈夫。


今ならきっと気付かれない。
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