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溺れる金魚
第33章  ホワイトクリスマス
ゆっくりとした歩調で彼女の後を追うと、既に彼女の片手にはスマートフォンが納められておりそれからすぐに会話を始めた。


「お母さん?お父さんは近くにいる?今、佐野さんがお見えになって……ええ、そう。うん代わって」

母との会話を終えるやそのスマートフォンが佐野に手渡される。


「すみません、ありがとうございます」

一瞬触れた人差し指。


彼女が慌ててスマートフォンから手を離し、落ちそうになったのを佐野も慌てて持ち直す。

「……社長、お休みの日にすみません。実は……」



用件を話し始めようとして沙良から離れようとしたときには既に、彼女の方が先にさりげなくその場を離れていた。



そんな所すら愛おしく思ってしまう。
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