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溺れる金魚
第33章  ホワイトクリスマス
「では、お疲れ様でした。今日は私は妻の実家に泊まりますので、これで失礼します」

我が儘で年老いた得意先の社長との話も順調に済ませて、佐野に今夜のホテルの名を告げると秘書の近江は出産のために札幌市内に里帰りしていた妻の元へとさっさと行ってしまった。


彼の指示通りに札幌駅に隣接したシティホテルへと向かう。


……珍しい。

いつも彼が手配するのは素っ気も無いビジネスホテルなのに……。


不思議に思いながらもフロントへと足を進めた。

佐野が名を告げると相手の女性が変なことを言う。



「お連れ様は先にお部屋でお待ちです」


「……連れ?」

「はい。奥様と伺っておりますが」


チェックインの際に書かれた用紙を見ながら答えているのだろう。


下に落としていた目線を今度は佐野に向ける。
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