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溺れる金魚
第13章  記憶の無い朝
バランスを崩して佐野の胸に飛び込んでしまった彼女が弾くように身を離そうとしたとき、名残惜しいと思ってしまった自分に強く動揺した。



それでも目の前で足を痛めてしまいうずくまる彼女を横抱きに抱えた。

華奢な肩、細い腕を更に小さくまとめて大人しく自分の腕の中に収まる姿に胸が高まった。



当時は忙しさで恋人とも別れたばかりだった。

人肌が恋しいだけ。


そう思うのに、彼女の艶かしい素肌を夜な夜な想像しては、後悔の念に晒される日々が増えていった。



どうしたらこんなに無垢な女子高生が出来上がるのかと当時は不思議にも思っていたが、一緒に暮らしてみると意外に頑固な所やドジな所も発見できて楽しかった。


ただ、佐野はそれを素直に表には出せなかった。


時々思う。




無理矢理にでも交われば彼女は受け入れてくれるのだろうか。
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