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溺れる金魚
第13章  記憶の無い朝
あの時社長が、次を自分に譲りたいと言い出してきた時には驚いた。


青二才のたかだか秘書に何を言っているのかと暫くは断り続けたが、まさかこんな条件をつけても譲るとは考えていなかった。



欲しかったのは彼女。

無理な願いと分かりながらも彼女をくれるならと冗談混じりに放った言葉があっさりと受諾されてしまうとは。



仕方なく会社も引き受けた。

それを彼女はどう思っているのか……。




未だに名字で呼ぶのは彼女なりの抵抗なのではないかと思う。


年の離れすぎた自分と恋愛などしたいわけがない。

それを知っていながらも自身の我が儘で彼女を手に入れたが、今もまだ身も心も強引に自分の物に出来ないのは後ろめたさがあるからだった。
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