この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
美肉の狩人
第1章 絶望の中で見つけた獲物 香織

そうだ、俺にも、かつては家族がいた。知人の紹介で出会い、結婚した妻の恵美子、そして一人娘の佳奈。笑いがあふれる家庭。だが、そんなものは幻想だった。
上司に見込まれて、初めて取り組んだ本格的なプロジェクト。一週間のうちの半分以上を会社に泊まり込む日々、その合間に、あちこちを出張で飛び回り、家族を置き去りにしたまま、仕事漬けの日々が続いた。そして1年が過ぎた頃、妻には男ができていた。
久しぶりに帰宅した日。玄関にそろえられた男物の靴。違和感を覚えて、足音を忍ばせたあの時、俺のほうが後ろめたさを覚えていた。
やがて、聞こえてきた妻の喘ぎ声、聞き慣れない男の荒い息遣い。居間のドアを開けると、二人で選んだソファの上で、肌蹴たブラウスを身につけただけの妻が見知らぬ男に跨っていた。
こちらをみた妻の気持ちよさげに上気した牝の顔。その間も止まらない腰の動き、不思議と腹はたたなかった。
ようやく状況が飲み込めたように悲鳴を上げ、胸を庇いながら男にしがみつく妻。その背中に向って「頑張れよ」って言って、軽く手を挙げてから、俺はキッチンに向かった。
冷蔵庫から缶ビールをだしてプルを開ける。一気に煽ってから、煙草に火を付けた。そして、恵美子が男に跨っていた姿を思い返す。「あいつ、案外、積極的なんだな。」と記憶の中の受け身な妻を思い出し可笑しくなる。どうやら、俺は壊れちまったみたいだ。そう思いながら灰皿を探す。そして気がつく。
「家じゃ止めていたのになあ。」
顔をしかめる娘の顔が浮かんだ。少し痛い。あっちもこっちも、壊れるときはあっけないもんだな、そう思いながら、二本目の缶ビールを空けた。
三本目の缶に手を伸ばしそうになったとき、衣服を整え、別人のように取り澄ました妻と相手の男が現れた。
「ちゃんと逝ったのか」
そう尋ねたのを無視して、妻がまくし立ててきた。
「この人を愛しています。あなたは、私のことも佳奈のことも、全然見てくれなかったじゃない」
男も、援護射撃を繰り出す。
「あなたでは、恵美子を幸せにはできません。別れてください、もちろん、佳奈ちゃんは一緒に連れていきます。母さんと離れるなんてかわいそうでしょう」
一緒になって俺を責めてきやがる。俺は、どこかしらけてしまって、ふたりが交互に繰り出す言葉が煩わしいだけだった。
上司に見込まれて、初めて取り組んだ本格的なプロジェクト。一週間のうちの半分以上を会社に泊まり込む日々、その合間に、あちこちを出張で飛び回り、家族を置き去りにしたまま、仕事漬けの日々が続いた。そして1年が過ぎた頃、妻には男ができていた。
久しぶりに帰宅した日。玄関にそろえられた男物の靴。違和感を覚えて、足音を忍ばせたあの時、俺のほうが後ろめたさを覚えていた。
やがて、聞こえてきた妻の喘ぎ声、聞き慣れない男の荒い息遣い。居間のドアを開けると、二人で選んだソファの上で、肌蹴たブラウスを身につけただけの妻が見知らぬ男に跨っていた。
こちらをみた妻の気持ちよさげに上気した牝の顔。その間も止まらない腰の動き、不思議と腹はたたなかった。
ようやく状況が飲み込めたように悲鳴を上げ、胸を庇いながら男にしがみつく妻。その背中に向って「頑張れよ」って言って、軽く手を挙げてから、俺はキッチンに向かった。
冷蔵庫から缶ビールをだしてプルを開ける。一気に煽ってから、煙草に火を付けた。そして、恵美子が男に跨っていた姿を思い返す。「あいつ、案外、積極的なんだな。」と記憶の中の受け身な妻を思い出し可笑しくなる。どうやら、俺は壊れちまったみたいだ。そう思いながら灰皿を探す。そして気がつく。
「家じゃ止めていたのになあ。」
顔をしかめる娘の顔が浮かんだ。少し痛い。あっちもこっちも、壊れるときはあっけないもんだな、そう思いながら、二本目の缶ビールを空けた。
三本目の缶に手を伸ばしそうになったとき、衣服を整え、別人のように取り澄ました妻と相手の男が現れた。
「ちゃんと逝ったのか」
そう尋ねたのを無視して、妻がまくし立ててきた。
「この人を愛しています。あなたは、私のことも佳奈のことも、全然見てくれなかったじゃない」
男も、援護射撃を繰り出す。
「あなたでは、恵美子を幸せにはできません。別れてください、もちろん、佳奈ちゃんは一緒に連れていきます。母さんと離れるなんてかわいそうでしょう」
一緒になって俺を責めてきやがる。俺は、どこかしらけてしまって、ふたりが交互に繰り出す言葉が煩わしいだけだった。

