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5センチの景色
第2章 セ
止まったタクシーから、勇気が逃げないように勇み足で降り立った。
安達さんは私の行動にいちいち笑って、
そのたびに髪をクシャッとした。
私は「もう!」と子供扱いにムッとして
そのたびに髪を手櫛で直して行く。
安達さんの後をまるで戦に行くような決心をして
背筋を伸ばして歩く私に
エレベータの中で苦笑いした安達さんは
そっと私の肩を抱き寄せる。
「気を楽にして。高橋サンがイヤなことはしないから」
張っていた気持ちが急に緩んで
夜遅くに、会社の男の部屋に行くためのエレベーターの中で
肩を抱かれている自分の状況にハッとした。
ゆっくりと安達さんの顔を見上げれば
安達さんはじっとエレベーターの階数表示を眺めていて。
私の視線に気が付いて「ん?」と優しく口を動かす。
さっき・・・
全く知らない安達さんのその口に、本人の許可もなくキスしたんだ。
酔っていたとはいえ、自分の突飛な行動に恥ずかしくなった。
「ごめんなさい」
「何が?」
「さっき、いきなりキスして」
自分が、知らない人にいきなりキスされたら
どんなにイヤな気分になるか考えたら
その行動こそ子供だとなじられても仕方がない。
「いいよ。俺も高橋サンにたくさんキスするから」
そう言い終わらないうちにキスをした。
安達さんは私の行動にいちいち笑って、
そのたびに髪をクシャッとした。
私は「もう!」と子供扱いにムッとして
そのたびに髪を手櫛で直して行く。
安達さんの後をまるで戦に行くような決心をして
背筋を伸ばして歩く私に
エレベータの中で苦笑いした安達さんは
そっと私の肩を抱き寄せる。
「気を楽にして。高橋サンがイヤなことはしないから」
張っていた気持ちが急に緩んで
夜遅くに、会社の男の部屋に行くためのエレベーターの中で
肩を抱かれている自分の状況にハッとした。
ゆっくりと安達さんの顔を見上げれば
安達さんはじっとエレベーターの階数表示を眺めていて。
私の視線に気が付いて「ん?」と優しく口を動かす。
さっき・・・
全く知らない安達さんのその口に、本人の許可もなくキスしたんだ。
酔っていたとはいえ、自分の突飛な行動に恥ずかしくなった。
「ごめんなさい」
「何が?」
「さっき、いきなりキスして」
自分が、知らない人にいきなりキスされたら
どんなにイヤな気分になるか考えたら
その行動こそ子供だとなじられても仕方がない。
「いいよ。俺も高橋サンにたくさんキスするから」
そう言い終わらないうちにキスをした。