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5センチの景色
第6章 景
「全部、早いと言ったら、美鈴はどうする?
いつものように低いパンプスが美鈴にはあってると言ったら?」

なんで、そんな意地悪な質問をするの?

この靴を履いてくるのはいい考えだと思った。
履きなれた3センチのパンプスじゃなくて。
いつもより5センチも高いヒールのこの靴を履けば・・・・
大人になれるような気がした。

けど、結局は安達さんに心配されて
コース変更させて、躓いて。

「この靴を履けば、大人に見えると思ったんです」

見えるだけじゃダメなのに。
そもそも、この靴を履いたって大人になんか見えやしないのに。

「ヒールが?大人になるにはその高さが重要なのか?」

いつも低いパンプスを履いている私が
どれだけその「たかが」ヒールの高さに劣等感を抱いているかなんて
安達さんには分からないよ。

大人の男には、そんなことは分からない!

「私には重要に思えたんです!」

涙が、一粒流れ落ちた―――
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