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終止符.
第16章 愛しい人
3月吉日───



「まったくもうっ…、式にも出るって約束したのに、何やってんのかしらあの二人…」


沙耶は森下の腕に手を添えてバージンロードをにこやかに歩きながら、二人の姿を捜してブツブツ独り言を言った。


「沙耶、静かに…みんなに聞こえる…。きっと来るさ。」


参列者に会釈をしながら森下が沙耶をなだめた。

教会の扉が開くと、「わぁっ…」と歓声が上がり、二人に祝福の紙吹雪が舞い、拍手が沸き起こった。

純白のウェディングドレスに包まれた沙耶は、はにかんで微笑み、森下の腕をギュッと掴んでみんなに手を振った。


「おめでとう沙耶。」


娘と手を繋いだ千秋が声を掛ける。


「やっとだな、気を揉ませやがって。」

「沙耶、きれい…」

「森下、尻に敷かれんなよ。」

「もう敷かれてるし…」

「あははは…」


二人の門出を祝う職場の仲間達が、待ち構えていたように次々と声を掛けた。


なだらかな丘の上に建つ小さな教会に、柔らかな陽射しが降りそそいでいた。

石畳の続く坂道に植えられた桜の花びらが、風に吹かれて舞い上がり、澄みわたる青空からふわふわと下りてきた。


二人は嬉しそうに顔を見合せ、階段の下に集まってくるみんなに深々と頭を下げた。


「えーっと、ほ、本日は、ありがとうございます。ははっ…」


白いタキシード姿の森下が照れながら挨拶をすると「ヒューヒューッ」と冷やかしの声が掛かる。


「やっぱりいない…」


沙耶は仲間達を見渡して口を尖らせた。


「沙耶さんっ、ブーケ投げて…」


女性陣が声を掛けた。


「ちょ、ちょっと待ってね。皆さんが揃ってから…あはは…」


教会の中から出てくる参列者の中に篠崎夫妻の姿があった。


「あ、社長だ…、そっかご夫婦に立会人をお願いしたって言ってたな…」


あちこちで声がする。


「やっぱうちの社長って素敵…」

「うん、そだね。」

「勝てねぇだろ? 奥様に…」

「うるさいっ…分かってるわよっ…」

「あははは…」


明るいざわめきが、結ばれた二人を温かく包んでいた。


「沙耶先輩、ブーケトス、お願いしまーす。」

「あ、あはは…もう少し…、──…あーっ、やっと来た!」


沙耶の視線を追って、みんなが振り返った。


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