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第11章 温泉旅行

帰宅した貴俊は、とても機嫌がよかった。いつも穏やかな雰囲気と表情を崩さない男性ではあるが、今日は喜色も明らかだ。

「今日はみんなにいいニュースがあるよ」

ロビーに集まっている使用人達を見回す。

「日頃の感謝を込めて、臨時ボーナスを出すよ。明日振り込まれるから楽しみにしてて！」

わぁっ、とざわめく中、貴俊がメイドの方へと歩いてくる。

「君たちは明日から二泊三日で温泉旅行ね」
「ほんとですか！？」
「やった嬉しい！」

にこにこにこにこ

「日頃の疲れを癒しながら疲れてる僕たちも癒してね」

貴俊の言葉にメイド達は顔を見合わせると、ぷっと吹き出した。

「はい、喜んで」

敦美の答えに貴俊は嬉しそうに頷く。

「明日10時にロビーに集まってね。明日に備えて今日はみんな早く寝るんだよ」
「はいご主人様」

そう言って貴俊はメイド4人の頰にキスをして、誰も連れずに部屋へと戻って行った。

「…信じられない。ほんとに律子と敦美を置いていかれたわ」
「サラさん…そんなしみじみと」
「だって貴俊様よ？」

いやそうだけれども。

貴俊様の後ろ姿をじっと見守っていた律子がぼそりと呟く。

「温泉でゆっくりできるのかしら、私たち」
「えええ」

声を上げた涼子の横で敦美が困ったように眉を下げた。