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3分間のナイトトリップ
第2章 美味しいキノコを召し上がれ

握ってごらん、カチカチだよ。
頭の中に、昔の男の声が響く。
そっと指先で触れたそれは、人肌のぬくもりのようなものはなく、冷たくて柔らかいキノコの感触だった。
ちょっと安心して、キノコの軸の部分をそっと握る。
シゴいてよ。
頭の中の声に従って、エミは握った手に力をこめる。
ぱふっ!
シゴくように手を動かすと、キノコのてっぺんに開いた穴から、胞子のような、粉状のものがものが発射された。
「いやぁ!!」
我に返ったエミは、叫び声をあげて、急いで家の中に逃げ込んだ。
洗面所で手を洗ったけれど、それだけでは気が済まなかったので、服を脱ぎ捨ててシャワーを浴びる。
キノコから出たのは、細かい粉のようなもので、ふわりと空気にとけ込むようにして、すぐに無くなった。
別に体について汚れたわけでも、臭いがあるわけでもなかったが、なんとなく気持ち悪かった。
どうしたらいいんだろう、あのキノコ。
もう、怖くて触れない。
髪も体も泡だらけにして、ゴシゴシと洗う。
庭に出なければいいのかもしれないが、アレがずっとあそこにあると思うと、それも何だか落ち着かなかった。
マキに頼んだら退治してくれるかもしれないが、また大はしゃぎされるのも何だか嫌だ。
除草剤とか撒いたら、無くなるかなぁ。
隣のアジサイを枯らしてもいいから、できるだけ近づかずにキノコを排除したかった。

