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3分間のナイトトリップ 
第3章 サロンに咲く花
「お待たせしました」


「きゃ!」


いつの間にか店主が背後に立っていて、小夜子は飛び上がらんばかりに驚いた。


「すみません、驚かせちゃって」


店主はそう言って微笑んだが、小夜子の見ていたものに気付いたのだろう、花の前まで移動すると、静かな声で話し始めた。


「この花はですね・・・」


きれいに爪を切りそろえた長い指が、赤い花びらにそっと触れる。


「この花は、私の父が生まれた国に自生しているもので、女性のためのハーブとして知られています」


指先が花びらの縁を優しくなぞると、漂っていたアロマの香りがいっそう強くなった。

アロマだと思っていたのは、この花の香りだったらしい。


「この花の香りは、女性の心と体を開放して、リラックスさせる効果があるんですよ」


店主の声はおだやかだが、花に顔を向けているので、表情はうかがえない。

エキゾチックで甘い香りが部屋に広がっていく。

小夜子は、一呼吸ごとに、体から力が抜けていくのを感じた。

ぬるいお風呂に浸かっているような心地で、頭がぼんやりとし、警戒心が薄れていく。

うっとりと、花びらを撫で続ける店主の指先を見つめる。


「本当に、すごく効果があるんですよ、形はちょっと変わってますけどね」


店主はこちらを振り向いて、いたずらっぽい笑みを浮かべた。

その笑顔にぼんやりと見とれながら、小夜子は急速に眠りの淵に落ちていった。


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