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女王のレッスン
第1章 ■最初のレッスン
「あ……あの、凄かったです。カナちゃん」
「うんうん、他には?」
「お……もってた緊縛のイメージとはちょっと違ったけど、圧倒されたし……。綺麗、でした」
「うわぁー、嬉しい!」
笑顔全開。
ステージ上でうっとりしていた彼女からは想像もつかない程、よく笑ってよく喋る。
「瑛二さんはねぇ、ぶっきらぼうだし独特だけど、いつも絶対綺麗にしてくれるんだ」
されたことを思い出してるみたい。
目を閉じて嬉しそうに彼女は言ってから、私を見た。
「講習会も出るんでしょ?縛られる方?縛る方?ていうかお名前聞いてないや」
「あ、遥香です。一応彼を縛るつもりで」
「ふうん。遥香女王様だね!がんばってね!」
さっきと同じ、手をひらひらと振って、カナちゃんは個室へと消えた。
女王様……?や、まあ、そうなるの、か?
私が?女王?
響きが全然しっくりこなくて、首を傾げてそこを出る。
イメージは仮面つけて、黒光りするピチピチのボンデージで、網タイツとかハイヒールとかで鞭持ってるような。
感情の整理がつかず、心のざわつきを抱いたままで私は柊平の隣のスツールに座った。
「はい、ウーロン茶」
「ありがとう。どうだった?さっきの」
「うーん……思ってたのとは少し違ったけど、世界観が凄くてどうでもよくなったかな」
「ああ、ね。綺麗だったなぁ……」
やっぱりそれが私の中で一番大きなウェイトを占めていた。
自由を奪っているはずなのに、カナちゃんは綺麗に開花した感じがして、終わった後でも笑顔で。
そこはプロ意識なのかもしれないけど、それでも凄いと思う。
興味本位だけだったのに、なんて世界に来てしまったのか。
「柊平もされたくなった?」
「う……うん……」
「そっか」
「遥香ちゃんは?縛ってみたいとか縛られたいとか思った?」
「私、は……」
縛ってみたい、縛られたい、とかそういうのはなんかちょっと違う……ような。
敢えて言うのならどっちもしてみたい。技術そのものに惹かれてる気がする。
そしてその技術によって引き出される空気とか、世界とか、美しさに。
「どっちもあるかな。取り敢えず今日は縛ってみるけど」
「うん、わかった」
私の想いなど露ほども知らなそうに、嬉しげに柊平が笑った。