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女王のレッスン
第4章 ■仕事のケンガク
稜くんが裏に消えて結衣子さんとふたり隣り合うと、女王様姿の彼女を頭の天辺から足先まで順に見た。
縄化粧とボンデージ。まるで服を着替えるように一瞬で自分の方向性を決めた、彼女。
「なぁに?」
「瑛二さんに、結衣子さんのS転のきっかけを聞きました」
「ああ、驚いた?」
「とっても。でも、私も似たようなことしてるって言われて」
「間違いないわね。一瞬の閃きを無視出来なかったでしょ?」
「はい」
「私もそう。でもプレイ経験がなかったら間違いなく立ち往生したわ。わからないもの、何を望まれているかなんて」
ふふ、と息を漏らすように彼女は笑い、私を見た。
「何か掴んだ?土曜日と、今日と」
「少しずつですけど。サディストって努力の人ですね。気遣いしかしてないみたい」
「全くね、性質の悪いのを除けばだけど。マゾの時はそういうの、見ないようにしてたわ。こっちに立ってやっとわかった」
今でこそ笑う彼女も、そうやって自らの武器を増やしていったのか。
「遥香ちゃんもきっとどんどん出来ることが増えていくはずよ」
基本は受け身のマゾヒストと、基本は努力のサディスト。
始まりは緊縛への憧れ。だけどそれじゃどうにもならない。
「ところで暫くの間の水曜と金曜、瑛二くんが来てうちの子たちに緊縛教えてくれることになったの。返事は聞くまでもないかしら」
一瞬の閃きを、私も逃せない。