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女王のレッスン
第5章 ■努力のタマモノ
「ハンガー掛けとく?」
何も考えず受け取り見上げると、「違えよ」と言うと同時に肩を後ろから抱かれ思わず身構える。
「途中で脚抱えたくなったら使う用。タイトスカートは見えやすいからなー」
耳の近くで、ふたりに聞こえないように、今にも笑い出しそうな声で。
勢いよくそちらを向きそうになるのを唇を噛んで抑え、肩に置かれたその手の甲を軽くつねった。
こないだの稜くんにされたそれが皮肉にも役立ったようだ。
「ほう」
「……預かるだけだし」
「この際ポーカーフェイスも身に付けろ。視線が甘いててて」
つねる力を強めた上捻ると肩からその手が離れる。
「痛ってーな……ユイの変なとこ似てくれるなよ」
「魅せてくれるんでしょ?瑛二センセイ」
シャツを持ったまま腕を組んだ。
今日の靴は結衣子さんに買って貰ったベージュのヒール。身長差が10cm程度なら、下からだって見下ろせる。
「……その調子だ。しっかり見ておけ」
含み笑いを落とされ、タンクトップの背中を見送った。
ソファに座り靴だけ脱いで、預かったシャツを拡げて膝に掛ける。
「よろしくね、ルカちゃん」
穏やかだと思ってたケンさんの瞳の奥に、鈍く光る、凶暴な雄。
「勉強させて頂きます」
なんだか急に、不敵に笑えた気がした。
私の中にももしかしたら、凶暴な雌がいるのかもしれない。