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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク
「……これ」
「お前だよ。紛れもなく」
「嘘でしょ」
「言ったろ。綺麗だって」
得意気な顔で頬杖をついて、瑛二さんは楽しそうに笑う。
「イイ顔してたから撮った。色気出たねお前。最初の頃とえらい違いだ」
不意に熱っぽい視線を向けられて、僅かに顔がかあっとなった。
こういう顔を、例えばセックスの最中にしていたりする訳で、当然それを見る相手がいた訳で。
考えたら堪らなく恥ずかしくなり、次の画像に移った。結衣子さんに変わって人心地がつく。
「何をそんなに照れる」
「無茶言わないでよ。見慣れなさすぎてドキドキする」
「そりゃそうだ。でもそういう顔が男を惹き付けるんだよ。感じてる女の顔も散々見ただろ」
「見たけど。わからなくもないけど」
「十分に魅力的だと思うけど」
口調をわざわざ真似て言う瑛二さんを睨むと、彼は柔らかな髪に指を差し入れてくつくつ笑った。
魅力的とかいきなり言わないで欲しい。所在なくなって画像を進めると、それまでと比べ物にならないくらいの数の彼女がそこにいる。
厳選したって言った結果がこれなのか、と彼の情の深さを知った。
「……綺麗だね」
「知ってる」
そのひと言が全てを示す。
次第に彼女の快感の色が濃くなるにつれ切なさが増して、私は画像を閉じた。
これだけのものを断ち切るの、どれほどの勇気がいるのだろう。諦めてしまった理由が見えるみたい。
「いい撮影会だった。毎回こうだといいんだけどな」
「結衣子さんに聞いたよ。怒鳴ることもあったって」
「そのくらいこっちは本気でやってるんだ。そういうことだってままある」
「またやるの?写真集用にこういうの」
「どうかな。コンセプトは出来たから、今のところは合わせてそれぞれ各所でいいと思ってる」
「各所?ああ、今も時々やってる数時間の撮影の?」
「いや、日本各所」
「へえ、日本……」
いつもの調子で、いつもの雰囲気で。そのままで言うから、危うく流しそうになった。
「……日本、各所?」
同じフレーズを繰り返して、悠然と構える猛禽類を覗き込む。
「ああ」
「どういうこと?日本各所って……」
「まんまだよ」
不思議なことでも言ったか?と言いたげな顔をして瑛二さんはさらりと告げた。
「暫くここを離れる。その為の撮影だった」