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女王のレッスン
第7章 ■最後のレッスン

ポケットから取り出したレトロな鍵風のUSBメモリも同じ手に握る。

「……自分で撮ったんだから、自分で行けばいいのに」
「この中には別にあいつのだけが入ってる訳じゃない。講習だけで精一杯だ。今はそれ程時間が惜しい」
「どうしてよ、せめて結衣子さんのくらい……」

じろり、と、見下ろす視線。威圧感に口を噤んで、そのふたつに手を伸ばす。

「ルカは俺のアシスタントだろうが。ユイのはこっちで時間作って見せるよ。言いたいこともあるだろうしな」

手の中に収まったそれをじっと見つめて「うん」と頷いた。
当然の話だ。このふたりはふたりで会うこともある。だけど色々知ってしまった今、それがとてもつらくもあった。
会って、画像を見て、話をして、そしたら……。

「瑛二さんは」
「ん?」

また衝動が起こるのだろうか。
彼に、或いは、彼女に。

「結衣子さんのこと、どう想ってるの?」

彼は彼女と共にいながら、名前の付く関係性を望むことはなかったのだろうか。
独占欲だってそれなりにあって、なのにただ、衝動的に抱くだけなんて。

「……愛してるよ。でも、それだけだ」

達観したような口振りで瑛二さんは言い放つ。
愛し合ってるはずなのに、ふたりはふたりのはずなのに、言葉だけがとても虚しく聞こえてしまった。

示し合わせたみたいな台詞が脳裏に蘇って苦しくなり、お店のドアの前で目をぎゅっと閉じて開く。
もしかしたらこれまでそうやって言い聞かせてきたのかもしれない。
お互いがお互いを過ごす為に。
意を決してドアを開けた。カウンターのスツールをくるりと回して、そこに座る彼女がこちらを向く。

「いらっしゃい。遥香ちゃん」

いつものように、にこやかに、結衣子さんは私を迎えた。


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