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女王のレッスン
第8章 ■女王のドクリツ
しゅる、しゅる、と麻縄が擦れる音を立てて素肌を彩っていく。
「ぅあっ……」
漏れ出た声。色欲を帯びて部屋に響いた。危ないかも、と思って少し意識を切り離す。
細く長く吐き出した息で取り戻す冷静さ。
コントロールすることをもっと覚えないといけないかも。いや、それよりこの入り込みやすさも問題。
「喘ぐと余計入るよ」
「……無茶、言わないでよ」
「ほんとドMだね満くん」
ああ、まずい。つい余計なこと言った。喜ばせかねない。暑さを感じてラベンダー色のサマーニットの襟元を掴んで空気を扇ぎ入れた。
白いジーンズに包んだ脚を組み替え目の前で掴んでる縄尻を先に進ませようか考え始めた時、窓をバチバチと叩いていた雨が止んだことに気付きカーテンを少し開ける。
雲の切れ間から差す太陽の光。このまま晴れそうだ。
「……やっぱ解く。なんか熱中しちゃった」
「ええ!?俺いい感じだったのに」
「私この後出掛けなきゃだし。満くんマゾモード入るとほんと喘ぐよね」
「今なら踏まれても喘ぐよ。どう?」
「遠慮しておく。ごめんね」
丁重に断って梯子縛りを施した満くんの腕を取り解き始めた。
6月最後の土曜日の午後。満くんを家に呼んで緊縛講習前の練習台にしていた所、少しだけ感じさせてしまったらしい。
そういう気はなかっただけにちょっと不覚。雨の音を聞いている内に本気で熱中していたみたい。
「遥香ちゃんも女王様やってみればいいのに」
「それっぽいことはたまーにお店でするけど……そっちにいくより緊縛師の方がいい」
「瑛二さんみたいなこと言うね。意識してる?」
「なるべくしてなっただーけ」
足し縄の分を取り払って、三点留めに手を掛ける。もう何度も何度もやってきたけど、毎回緊張するし、毎回教えを思い出す。
慣れた人でもそれは一緒。何度やったって正解には辿り着かない。
縄尻を解いて襟留めに手を掛けようとした所で、オートロックのインターホンが鳴った。
なんか来る予定、あったっけ?荷物も来客も特にないはず。