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女王のレッスン
第3章 ■奉仕のセンセイ
そこは間違いなく、あの猛禽類のお陰だろう。悔しいことに。
泣き言と決意を聞いてもらった後、他愛のない話をしながら車で家まで普通に送ってもらって
本当にそれだけ。なのに、とても気分が晴れている。
だけど向こうはどうなのだろう。
周囲には結構いつも通り振る舞っていたように見えたけれど。
「戸田さんは?それ言ってなんか言ってた?」
「それがさ、私好きじゃないって言った後泣いちゃって。まともに話出来ないまま鍵置いて来ちゃったんだよね」
「えー、それじゃちゃんと別れたか微妙じゃない?平気?」
「うーん……さすがに平気だとは思うけどね。連絡は返ってこない」
「そっかぁ……」
最後のひと口を放り入れて水で流し込んだ。
会社内での接点が薄くなっていたことが幸運とすら思える。
「誰か好きになったとかでもない?」
「ないねぇ」
「じゃあ合コン話来たら誘う?」
「それもいいや、当分ひとりでいようと思って」
食後のコーヒーが来てなんとなくそのまま口を噤んだ。
向き合うと決めた以上、そういう存在がいても迷惑になる。
元々常にいないと嫌というなタイプでもないから、特に不安もなかった。
「ヨユーだね、なんか」
「どこがぁ?もうギリギリだよ色々と」
「まあいいけどさ。なんかあったらまた教えてよ。これでも心配してるから」
「ありがとう。そうする」
でも、言えないことはたくさんある。
きっかけも原因も今やろうとしていることも全部。
案外みんなそういうものを抱えて生きているのかもしれないと思うと、少し優しくなれそうな気がした。