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毒蜜喰らわば
第10章 現れはじめる変化
「ただのデジャブじゃないのかしら・・ずっと昔の、
 今とは全然違う時代の出来事みたい」

まさか、と口の中で呟いた。
まさか前世で茂と出会っていて、同じような場面に出くわしていた。
それが歴史のはるか彼方から私達の意識の中へと飛んできた、なんて
ファンタジックな妄想をしてしまいそうだ。

「今夜は美智の家まで送っていくよ、心配だから」

「でも、楠木さんの家とは反対方向よ。迷惑かけたくないわ、大丈夫だから」

私の住んでいる笹塚と彼の住んでいる入谷ではまったくの逆方向。
電車もいくつか乗り換えなければならないし。
だが茂は送っていくと言い張った。

「じゃあお言葉に甘えて・・お願いします。
 でも今夜だけね、これ以上迷惑はかけられないから」

「うん、わかった」


なんて良い男なのだろう。
もっと早く出会っていたら、雅治よりも先に出会っていたら、
私は確実に彼と将来の約束をしただろう。



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