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毒蜜喰らわば
第10章 現れはじめる変化
「うん、いいけど」

いいよ、と言えずにいいけど、なんて含みを持たせる様な言い方しか
できないひねくれ者の私を気にすることもなく、
雅治は家で夕飯を食べようと提案してきた。

「オレが久々に腕を振るってやるから、おまえはビール飲んでテレビでも見てろ」

へえ、めずらしい。
自ら率先して晩御飯づくりを宣言するとは。
やっぱり、この前の約束忘れを気にしているのかも。
だからご機嫌取りにこんな事を、と意地悪く推察してしまうが、
嬉しい気持ちがないことはない。

「うん、じゃあ、帰ろうか。
 うちの近所のスーパーで買い物すればいいよね」

言いながら歩き出すと、これまた珍しく雅治から手をつないできた。
ここしばらくなかった手つなぎも、今日はついでに復活した。

私はおかしくなって、口元を歪めて密かに笑った。
どうしてこんなにどちらもうまく事が流れるのかしら?
私の気持ちだけでなく雅治の気持ちまでもが軽快に動いてきたのは
嬉しくもあるが不安もある。
私が他の男に気を取られている事に勘付いたんじゃないかとびくついたりもする。

雅治の横顔は普段通り。
私の浮気心には気づいていない。
いつも以上に優しくしてくれる恋人に、
心の中でごめんねと謝りながら、つなぐ手に力を込めた。



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