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毒蜜喰らわば
第11章 蛍庭園が引き寄せるもの
真昼の蛍庭園は、都会の真ん中で紅葉狩りを楽しもうと
多くの人でにぎわっていた。
夕暮時や夜とは違って、子供連れの家族もいたりお年寄りのグループがいたり。
私達がこれまで味わってきた雰囲気とはまったく違うが、
それもまた新鮮だと茂と顔を見合わせた。
色づき始めた紅葉、枯葉を落とす柿の木。
日本の庭の美しさを楽しむ人々の中に、
ドレスアップした若い女性達とスーツ姿の若い男性達も多くいた。
どうやら結婚式の帰りらしい。
手にはみな同じ紙袋を提げている。
この少し先、欅坂の途中には有名なホテルがある。
彼らの提げている袋をよく見ると、そのホテルの名前が書いてあった。
「結婚式の帰りなのね。たくさんいる。もしかしたら今日は大安なのかしらね」
私もいつかは、そんな事も思いながら茂の腕に手を絡ませ紅葉を見上げていると、
横から急に声を掛けられた。
「あの、稲村さん?」