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毒蜜喰らわば
第12章 イタコの孫が見通した、愛・・
そう言ってからすすったコーヒーは、すっかり冷めてぬるくなっている。
みんなもつられるようにしてコーヒーをすする。
藍色に染まりつつある空の下で私は、遊女と若侍に別れを告げる。
さようなら、私はあなたたちの願いを叶えられない、静かに眠ってください。
横で呟きを聞いていた雅斗が、なにかを口の中で唱え始めた。
なんと言っているのかわからないが、たぶんお経かなにかだ。
手を合わせて目を閉じ唱え続ける雅斗の横で私も、そして里佳子と進も、
外灯のともった蛍庭園で手を合わせた。
秋深い夕暮は暗くなるのが早い。
ほんの何分かの間にさらに空の色は濃くなっていた。
「今日は私のためにありがとうございました。
堀内さん、現実に引き戻してくれてありがとう。
里佳子、進さん、付き添って見届けてくれてありがとう」
みんながカラにした紙コップを集めている里佳子は、少し涙目になっていた。
「美智・・ウチで堀内さんと出会ってよかったね。
これもきっと恋願神社のお導きなのかもしれないよ。だって、イタコの孫なんて
そうそう出会わないからね」
「ほんとね、里佳子の言う通りだわ。みなさん、今日はお世話になったので
この後の食事は私におごらせて。さ、行きましょ」
お~!やったぁ!と歓喜の声と共に立ち上がる3人を引き連れるようにして、
蛍庭園をあとにする。
遊歩道から大通りに出るところで私は庭園を振り返ってみた。
もしかしたら遊女が見ているんじゃないか・・だけど・・
私には彼女の姿は見えなかった。
それでいい、それで。
霊の姿は見えない方がいい・・
みんなもつられるようにしてコーヒーをすする。
藍色に染まりつつある空の下で私は、遊女と若侍に別れを告げる。
さようなら、私はあなたたちの願いを叶えられない、静かに眠ってください。
横で呟きを聞いていた雅斗が、なにかを口の中で唱え始めた。
なんと言っているのかわからないが、たぶんお経かなにかだ。
手を合わせて目を閉じ唱え続ける雅斗の横で私も、そして里佳子と進も、
外灯のともった蛍庭園で手を合わせた。
秋深い夕暮は暗くなるのが早い。
ほんの何分かの間にさらに空の色は濃くなっていた。
「今日は私のためにありがとうございました。
堀内さん、現実に引き戻してくれてありがとう。
里佳子、進さん、付き添って見届けてくれてありがとう」
みんながカラにした紙コップを集めている里佳子は、少し涙目になっていた。
「美智・・ウチで堀内さんと出会ってよかったね。
これもきっと恋願神社のお導きなのかもしれないよ。だって、イタコの孫なんて
そうそう出会わないからね」
「ほんとね、里佳子の言う通りだわ。みなさん、今日はお世話になったので
この後の食事は私におごらせて。さ、行きましょ」
お~!やったぁ!と歓喜の声と共に立ち上がる3人を引き連れるようにして、
蛍庭園をあとにする。
遊歩道から大通りに出るところで私は庭園を振り返ってみた。
もしかしたら遊女が見ているんじゃないか・・だけど・・
私には彼女の姿は見えなかった。
それでいい、それで。
霊の姿は見えない方がいい・・