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毒蜜喰らわば
第13章 別れも幸せも成就
赤い鳥居を見上げる。
今日は私一人。
堀内雅斗に言われた様に、倦怠封じ守を納めにやってきたのだ。
一週間前のどんよりとした曇り空と違って、今日は青空が広がっている。
まるで私の心の中を表しているかのような、すがすがしさを感じられる色だ。
玉砂利を踏む音も、軽やかに弾んで聞える。
社務所の前には相変わらず、御朱印を求めお守りを求めて人が群がっている。
御神木の前にも列を作って、恋愛の成就を祈っている。
あの時の咲枝と私も同じだった。
単純にお参りをして御朱印をいただいて、そのくらいの、
どちらかというと軽い気持ちだった。
だけど私には・・遊女が憑いてきてしまった。
いや、すがってきた、と言ったほうがしっくりくる。
私の体を使って成就できなかった恋の無念を晴らそうとした。
人の念、執念というものはその肉体が無くなってしまっても生き続けることもある。
生きている人間も、生霊となってしまうこともあるらしい。
念とはそれほど怖いものなのだと思い知らされた気がする。