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毒蜜喰らわば
第13章 別れも幸せも成就
*
あれからひと月もしないうちに、別れは唐突にやってきた。
来週から師走、そんな慌ただしい11月の終りの月曜日。
用具の交換にやってきたのは前任者の川島さんだった。
「おはようございます・・あの、楠木さん、どうかされたんですか?」
もしかしたら病気や怪我で仕事を休むことにでもなったのではないか、
そう心配して尋ねてみると川島さんは大げさに首を振って見せた。
「いえ実はですね・・おととい急にエリア長をやっていた者が亡くなりましてね。
楠木君が前に担当していたエリアを含んだかなり広範囲の担当をしていたもんで、
みんなで手分けして回ることになったんです。
楠木君が慣れているエリアなんで急きょそっちに行ってもらったんですけど。
たぶんまた移動になって私がこちらの担当に戻ることになると思いますよ」
伝票を受け取る手が震えた。
川島さんの顔を直視できなかった。
悲しみや辛さだけじゃない。
驚きもまた、私の心を動揺させた。